薔薇は赤い








Roses are red,
薔薇は赤くて

Violets are blue.
すみれは 青い

Sugar is sweet,
砂糖は 甘くて

So are you.

あなたも そう





まぶしい。

僕はベッドの中で、目に入ってくる光に気がついて目が覚めた。

今は何時だろう?

そろそろ起きようか、それともまだこのまままた眠っていようか。

とりとめなく考えながら、気持ち良いまどろみの中でぐずぐずと枕を抱いていた。

今日は確かナポリで、明日は・・・・・どこだっけ?

そこまで考えていて、はっと気がついた。

違うよ!

欧州での仕事は全部済んだから、昨日日本に帰ってきてたんじゃないか!

僕はぱっと目を開けると起き上がってあたりを見回す。

ここは富士見町の僕たちの家で、僕は見慣れたベッドで眠っていたんだった。

そうだった。久しぶりに帰ってきたからって、圭と二人で小料理屋ふじみに出かけたっけ。

おやじさんとおかみさんの歓迎を受けて ビールで乾杯してほろ酔いで帰ってきた。

それから一緒にお風呂に入って、でもそのまま寝るにはちょっと呑み足りなかったもので、圭が「いいワインがあります」っ てワインクーラーから取り出してきた白の軽い辛口を開けて、二人で呑んだんだ。

それからそのままベッドへと誘いあって・・・・・?

ぼんやりと眠気が去らないままに昨夜のことを思い返していると、ドアが開いて圭が入ってきた。

「ああ、起きられたのですね」

圭はベッドに手をつくと、愛しげに微笑みながらおはようのキスをしてくれた。いつものように甘くて濃厚なキスを。

もしかしたらいつもよりも濃厚で、このままベッドに戻らなければならなくなりそうなほど官能的な。

でもそれは困る。今日は用事があるんだから。

「今日は10時に大学へ出かける用事があると言われていましたが、起きられますか?」

圭にも伝えてあったんだね。

「今は何時?ああ、8時か。うん、シャワーを浴びて来るね」

「ええどうぞ。その間に朝食を用意しておきましょう」

「うん、頼むね」

僕はベッドの中から起き上がろうとしたんだけど、ふらりと腰がよろけた。

「おっと、大丈夫ですか?」

「ごめん。平気だよ。まだちょっと目が覚めていなかったみたいだ」

こたえたあとで気がついた。こんなふうになるのは、たいてい圭と情熱的な夜を過ごした翌朝だということに。

出かける用事があるっていうのに、ハードなセックスをやっちゃってたっけ?

昨夜の自分の行動を思い出していると、ふいに思い出した。

・・・・・ひどく恥ずかしいあれこれを。

ぱっと眼を上げれば心配そうな圭の顔があり、彼のシャツの襟に隠れていてもちらりと見えているそれは、昨夜僕が夢中 で付けてしまったキスマークに違いない。

それも一つだけじゃないだ。

僕の視線の先が分かって、考えている事を察したんだろう。圭は嬉しそうに微笑んでみせると、耳元にささやいてきた。

「昨夜、実に淫蕩な姿を見せてくれて、僕をむさぼっている君はとても素敵でしたよ」

・・・・・思いだしてしまった。

顔から火を噴くというのはこんなことを言うのかもしれない。

「なぜ恥ずかしがる必要があるのです?君と僕とは愛し合っていて、しばらく会えなかった寂しさを情熱的に示してくださっ たのですから、とても喜ばしいことですよ。

ただ、官能的な君の姿をもう少し長く見せて貰いたかったのですが」

なんて、残念そうな口調で。

「う、うわぁっ〜〜〜!

僕は昨夜の狂態を全部、思い出してしまった。







二人でワインを空けた後、ベッドに入ると互いのからだを抱きしめあって、セックスへのプレリュードとなるキスを繰り返し ていた。

そして離れて会えなかった時間を埋めるように、相手のからだをまさぐり合うことに夢中になった。

ぴったりと寄せ合ったぬくもりを感じながら、手のひらや指先、唇や舌で互いの感じやすい場所を責めていく。

「ね、ねえ、そんなとこにもう触らないで。あ、だめっ!イっちゃうよ!」

「ですが、もう少しこちらもほぐさないと。しばらく間が空いていたでしょう。きちんと仕度しなければ痛いことになりますよ」

「で、でも我慢できない!早く入れて!」

切羽詰まってすすり泣いて懇願した。

自分の言葉に煽られて沸点を越えてしまった僕は、ふだんなら言わないような恥ずかしい言葉を口にしてねだっていた。

自分から足を開き、圭の腰に足をからめて誘う事まで。

「ねえ、圭っ!」

僕は懇願する。

腕をぐっと掴んだ手に力がこもって、圭の二の腕には爪の痕がくっきりと残ってしまう・・・・・ことに気がつくのは朝になってからの話。でも今はそれどころじゃない!

「ええ、僕の悠季・・・・・」

僕の片足を抱えた圭のからだがのしかかってきて、太くて熱いものがそこに当たっているのが分かる。

「は、早くっ・・・・・あ・・・・・っ!」

硬くて圭のソレが入ってくるのを歓喜をもって受け入れる。

「ね、ねえ。早く動いて!」

「ちょっと待ってください。このままでは持ちません!」

うめくように言った言葉に気がついて僕が目を開けると、少し苦しそうに眉をひそませた圭が呼吸をととのえていた。

でも、そんな表情がさらに僕を煽ってしまって・・・・・。!

「もう我慢できないっ」

からませていた足で圭の腰を引き寄せて、僕の腰をくねらせた。でもこんな程度の刺激じゃ満足出来るはずもなく。

「悠季っ!」

圭が不意に激しく腰を使い始めた。

突然の快感に、僕は声もなくのけぞり、あっという間に高みへと押し上げられた。

「だめ・・・・・だめ・・・・・まだ・・・・・もう少し・・・・・圭っ!や、やだ・・・・・あっ・・・・・イっちゃう!!」

空中へと放り上げられたような浮遊感と、奈落へと堕ちていくような失墜感を味わいながら、僕の魂は元のからだへと舞い戻っていく。

「素敵でしたよ、悠季」

でも、僕の中にある火種はまだ残っていて、今もまだくすぶっている。

荒い息をつきながら、圭はチュッと僕にキスをしてからからだを離し、僕の隣へとあおむけになった。

僕の中から抜き出された時には、甘いおののきにうめき声さえあがってしまう。

「ねえ、まだ足りない」

僕はねだったんだけど、鉄の理性を発揮した圭は言った。

「長時間のフライトで疲れておられるでしょう?それに明日は大学に行かれる予定ですから、起きられなくなりますよ」

そうだったっけ。

絶倫の圭のことだからあと何回でも平気なんだろうけど、僕のためを思って我慢してくれているんだ。

でも、このままじゃからだの芯に残った火種が眠らせてくれそうもない。

僕は起き上がると圭の上にまたがった。

「悠季!?」

圭のうろたえた声をよそに、僕はまだかたいままの圭に手を伸ばした。

「ねえもう一度。このままじゃ眠れない!」

うしろに手をついてからだを支えて、加減しながらゆっくりと腰を沈めていく。

さっきまで入っていた僕のアナルは、のどを鳴らすように喜んで圭を迎え入れていく!

あ・・・・・イイ!

圭の腹に手をついてゆっくりと抜き差しすると、落ち着きを取り戻した圭が手を伸ばして僕のあちこちを撫でてきた。

いつもより少し荒々しい愛撫は、思わずのけぞってしまうくらいに感じさせてくれた。

「ああ・・・・・悠季っ!」

ため息と共につぶやかれた言葉は更に僕の動きを強めさせた。

目を開いて見降ろしてみると、潤ませた目がとても色っぽくて。でも口元の笑みは圭に余裕があることを感じさせるものだったから、少しむっとなる。

僕はもう圭をむさぼること、快感を追う事しか考えられないのに。

だったらこうしてやるんだ!

僕はからだを倒して、圭の首筋に何回もキスをした。少し強く、あとがつくほどに。

「ゆ、悠季!?」

うろたえた圭の声が少し楽しい。

圭は首筋が弱くて、触れられるとひどくくすぐったがる。

それはそこが彼の一番感じやすいところでもあるわけで、そのまま快感へとつながることにもなるんだ。

キスして、くちびるでたどって、舌で味わって・・・・・。腰を振りながら彼を高ぶらせるのはとても楽しい。

でも僕の考えは少し無謀だったみたいで、あっという間に主導権は彼の元に取り戻されてしまった。

腰骨のあたりを強く掴まれて、強いストロークが打ちつけられて、僕の意識をかすませていく。

「あっ・・・・・イイっ!・・・・・イっちゃうっ!!」

「悠季っ!」

あっという間に僕の昂ぶりは弾けてしまった。

甘いだるさがからだをおおって、とろりとまぶたが重くなっていく。

「悠季、素敵でしたよ」

圭のキスを受けながら、指先さえ動かすのもおっくうだ。

「悠季、僕を煽るとは、小悪魔的な手管を身につけましたね。このままではすみませんよ」

でも、2ランウンド目のセックスは僕をそのまま失神させてしまうことになってしまう・・・・・らしいんだ。

「あは、・・・・・ごめ・・・・・もう・・・・・だめ・・・・・みたいだ」

「・・・・・仕方ありません。お休みなさい。ですが近々このリベンジに付き合っていただきますよ」

「あーうん。・・・・・わかっ・・・・・た・・・・・。約束・・・・・する・・・・・」

意味も考えずにそう言うのがせいいっぱい。そのまま甘い闇の中へと沈んでしまった。








「思いだしましたか?」

「・・・・・ごめん。君の事を放り出して眠ってしまったんだね」

「ええ。疲れておられたのですからやむを得ないことです。

せっかく君がタガを外して下さったのに、あまり堪能できなかったことが残念でなりませんがね。君が次の機会を承諾して下さったので、次はぜひゆっくりと味わいたいと思っていますよ」

ポーカーフェィスの内側で、実に楽しそうだ。

「・・・・・お手柔らかにね」

僕は少し顔が引きつるのを感じながら、圭に向かって笑ってみせた。

そそくさとシャワーを浴びに行きながら、僕は腰がもつだろうかと心配するのだった。
















少々遅ればせながら、悠季と圭の結婚記念日話です。
冒頭の詩はマザーグース。
ちょっと季節外れの詩(バレンタイン)なんですが、年中無休で甘々な二人ですから、
まあいいかなぁと・・・・・(苦笑)






2011.8/16 UP